由来

嘉祥２年（８４９年）頃から鳥海山に「手長足長」という悪鬼が住み、そのために人々が苦しめられたので、鳥海山大権現が三疋の鳥を遣わして、鬼のいる時は「有耶」、鬼のいないときは「無耶」と鳴かせて往来の人々に知らせていた。

斉衡３年（８５６年）文徳天皇の勅命を受けて慈覚大師が法力で退治することになり、小滝蔵王権現の神前に３３間の大護摩壇を築き、３７日間護摩密法の修行をし、役の行者が祀られた鳥海山大権現と小滝の蔵王権現に祈願して、ついに手長足長を退治しました。

そのとき蔵王権現の社頭アララギの大木で、一丈六尺の立木観音像と二十一社の山王権現を彫刻安鎮し、陵王、納曽利の面を造り、５３段の石段と土舞台を築き厭舞を奏して八講祭を行い、神恩に感謝のみ祭りを行いました。

このときの舞が今に伝わる「チョウクライロ舞」と言い伝えられております。

毎年５月の最終土曜日金峯神社の例祭に於いて、神社境内にある土舞台（閻浮堤：チョウクライロ山などと呼ばれている。）で奉納されます。

◎演目

　１．九舎の舞（くしゃのまい）

　　五穀豊穣を願う舞

　　青年二人が陵王・納曽利の面をつけ狩衣姿にて、同時に舞う。

　　一巡目が烏帽子舞、二順目が袖舞、三順目が扇舞となっている。

　２．荒金の舞（あらがねのまい）

　　世の中の平和を願う舞

　　青年一人が狩衣姿にて陵王の面をつけ、薙刀を持って舞う。閻浮台に張らた注連縄を薙刀で切り離す。

　　まず東方の〆を切り陽光を招き入れ、西方の神輿に導き、南、北と四方を清明にする。

　　次いで西・南・北と切り離し、舞いに入る。

　　延命長寿を願う舞

　　六人の男児が花笠を冠り、ササラを持つ三人と、羯鼓を腰に付けた三人が二列になって舞う。最初は先頭の二人だけで舞い、次いで六人舞いとなる。ササラを摺りながら「無欲・無私」の子供の清浄さと花笠による清浄さを表現し、才物の枯衰なく栄えんことを祈る舞。

　　唱え文句が「チョウクライロ」と唱えることから、この舞いをしてチョウクライロ舞と言われることもあり、代表的な舞いである。

　　人倫を尊ぶ舞

　　子供四人が舞う。修身斎家治国平天下（天下を治めるにはまず自分の行いを正しくし、次に家庭をととのえ次に国家を治め、そして天下を平和にすべきである。）を禮義としそのさまを舞う。

　　夫婦和合が万物生成の根元と教える舞

　　子供二人がお面を付けて舞う。再二神（伊弉諾：いざなぎ・伊弉冉：いざなみ）の国生みを表す舞。

　　国造りの舞

　　青年一人御神木を神官より受け取って舞う。

　　我国を治め万国を豊潤幸福にする舞

　　はじめは、男役が陵王の面を付けて舞い、次の人（女役）は納曽利の面を付けて舞う。

　この七つの式舞いを総称して「チョウクライロ舞」と云い、昭和４１年「秋田県無形民俗文化財」の指定を受け、昭和５６年には、国の「記録作成等の措置を講ずべき無形の文化財」として選択され、平成１６年２月６日「小滝のチョウクライロ舞」として国の重要無形民俗文化財に指定される。

この舞は物静かで単調な舞いです。それゆえ「物事の本筋をとらえ、高ぶることなく静かな心で世の中を見つめながら生きる。」

このことが「長く久しく生きる容」、長久生容(チョウクライロ)と云い伝えられる由縁であると考えられている。

民俗芸能